医療統計学入門③ ~対応のないt検定~

看護研究

どんな時に使うの?

対応のない2群の平均値を比較する
t検定は2つのグループ (2群) の平均値を比較し、差があるか (別々の集団だと言えるか) を調べるものです。
対応のない2群とは、データが別々の集団からサンプリングされた、という意味です。
例えば、「1年生と2年生の身長の平均を比べる」場合がこれに該当します。
例えば、1年生の平均値が160cmで2年生の平均値が170cmだったとします。t検定の結果、「2学年の身長には差がある」とされれば、「学年が上がると身長は大きくなる」と結論付けられるわけです。
一方で、「1年生の中間テストと期末テストの平均を比べる」場合は、同一の集団からサンプリングされているため、対応のある2群と言い、別の算出方法が適用されます。

対応のないt検定のための前提条件
こちらの記事でも紹介した通り、t検定は正規分布を使用して行います。
そのため、対応のないt検定を行うためには2群とも正規分布していることが前提条件です。
こちらの記事のフローチャートをご覧ください。

ステューデント?ウェルチ?2つある対応のないt検定
t検定には正規分布以外にもう一つ必要な条件があります。
それは等分散性です。
2群の分布が山なり (=正規分布) でかつ山の幅 (=分散) が同じ場合にt検定が行えます。これをステューデントのt検定といいます。
一方、分散が異なっている場合には素直にt検定はできません。調整が必要になります。これをウェルチのt検定といいます。
つまり、「対応のない」「名義尺度ではない」データの「2群比較」を行おうと思った場合は、
正規性を確認 → 等分散性を確認
した上で検定方法を決定するわけです。詳しくは関連記事をご参照ください。

JMPを用いた対応のないt検定の実際 (ステューデントのtの場合)

① データをセットする
【ファイル】→【開く】でexcelのデータファイルを選択する

② ワークシートを選択する
【ワークシート】の選択→【読み込み】でワークシートを選択する

③ 正規性を確認する
【分析】→【一変量の分布】を押す

【列の選択】から正規性を調べる群を選択→【Y, 列】→【OK】を押す

キーボードの[ctrl]を押しながら【▼】→【連続分布のあてはめ】→【正規のあてはめ】を押す

キーボードの[ctrl]を押しながら【▼】→【適合度】を押す

Shapiro-WilkのP値 (サンプルサイズが2001以上の時はKolmogorov-Smirnov Lilleforsと表記が変化) が0.05以上の時に正規性が認められる

今回は2群とも正規性が認められた。

④ 対応のないt検定を行う (等分散性の検定も同時に行う)
【テーブル】→【列の積み重ね】を押す

【列の選択】から2群を選択→【積み重ねる列】→【OK】を押す

【分析】→【二変量の関係】を押す

【ラベル】を【X, 説明変数】に、【データ】を【Y, 目的変数】に入れる→【OK】を押す

【▼】→【等分散性の検定】を押す

【▼】→【平均/ANOVA/ブリーフィングしたt検定】を押す

まず「分散が等しいことを調べる検定」内の両側F検定のP値を見る。その値が0.05以上であれば等分散性が認められる。よって、ステューデントのt検定の結果を参照する。
ブリーフィングしたt検定」内のP値を見る (絶対値が付いている方)。その値が0.05未満であれば2群に有意差を認める。

よって、今回の検定では2学年の身長に有意差を認めた。

論文への書き方

1年生と2年生の身長はそれぞれ正規性を認めた (P = 0.37,P = 0.43)。F検定の結果、両群に等分散性を認めたため (F = 1.51,P = 0.28)、ステューデントのt検定を実施した。その結果、2学年の間に有意差を認めた (P = 0.021)。

JMPを用いた対応のないt検定の実際 (ウェルチのtの場合)

① データをセットするワークシートを選択する正規性を確認する

ステューデントのtと同様の手順です。

④ 対応のないt検定を行う (等分散性の検定も同時に行う)

以下の手順もステューデントのtと同様の手順です。
【テーブル】→【列の積み重ね】を押す
【列の選択】から2群を選択→【積み重ねる列】→【OK】を押す
【分析】→【二変量の関係】を押す
【ラベル】を【X, 説明変数】に、【データ】を【Y, 目的変数】に入れる→【OK】を押す
【▼】→【等分散性の検定】を押す
【▼】→【平均/ANOVA/ブリーフィングしたt検定】を押す

ここから、ウェルチのtの場合におけるデータの見方を説明します。


まず「分散が等しいことを調べる検定」内の両側F検定のP値を見る。その値が0.05以上であれば等分散性が認められる。今回は等分散性は認められなかったので、ウェルチのt検定の結果を参照する。
Welchの検定」内のP値を見る (絶対値が付いている方)。その値が0.05未満であれば2群に有意差を認める。

よって、今回の検定では2学年の身長に有意差を認めなかった。

論文への書き方

1年生と2年生の身長はそれぞれ正規性を認めた (P = 0.37,P = 0.43)。F検定の結果、両群に等分散性を認めなかったため (F = 46.85,P < 0.001)、ウェルチのt検定を実施した。その結果、2学年の間に有意差を認めなかった (P = 0.24)。

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