こんにちは、塾長です。
仕事をはじめておよそ8か月が過ぎた今日この頃。
これまで沢山の苦難を乗り越えてきた新人看護師たちに、今の心境を包み隠さず話してもらいました。
看護師を続けるか迷っている方も、ぜひこの記事を読んで何かを感じ取っていただけたら嬉しいです。
リアリティショックの話
塾長:皆さん、こんにちは。今日はお集まりくださってありがとうございます。簡単に自分の部署と皆さんの状況(自立度など)をお聞かせください。
Aさん:私は消化器内科で働いてます。自立度は、採血がやっとこの前自立になりました、まだまだ失敗しますけど。夜勤はまだ先輩のフォローがついてます。よろしくお願いします。
Bさん:私は循環器外科の病棟です。採血や夜勤は独り立ちになりましたけど、自身はないです。入院患者さんの受け持ちが最近始まりました。手術出しが苦手です、よろしくお願いします。
Cさん:私は精神科なので、採血も夜勤も独り立ちはできていません。正直、将来他の科に行けるのか不安です。よろしくお願いします。
塾長:ありがとうございます。今回お集まりいただいた目的は、新人看護師さんが抱えている辛さや苦悩みたいなものを共有して、孤独感や疎外感を少しでも解消することです。
まず初めに、皆さんの学生時代についてお聞かせください。新人看護師が辞めてしまう理由の一つに、「リアリティショック」とか「学校と臨床のギャップ」とかが影響するといわれています。Aさんは、そのような体験はしましたか?
Aさん:すごく体験しました。
塾長:どんな体験でしたか?
Aさん:学生の時にも実習で、清拭や検温はしました。でも、受け持ちの患者さん1名に処置して終わりでした。今は10名以上の患者さんにするので、どの順番でするか、どうしたら効率的か、ということを考えています。
塾長:「受け持ちの人数」の問題ですね。学生時代は一人の患者さんを2~3週間かけて深く・濃密な看護展開ができましたが、看護師になるとそうはいかないと。Bさんはこのような体験はありますか?
Bさん:あります。学生の時は術後と言っても比較的症度は抑えめだったので。でも、看護師になってからは選べないので、いろいろな症度の患者さんに優先順位を付けて、ケアの順番を考えるということは学生時代にはしてこなかった経験ですね。
塾長:「症度」の問題ですね。Aさん・Bさんからは人数が増えて、症度も様々になると「優先順位を付けて回る」ことが大切だとお話がありましたが、精神科ではどうですか?
Cさん:精神科も一緒ですね。精神状態がよい患者さんと悪い患者さんだと、ケアにかかる時間も違ってきます。やっぱり優先順位が大切だと思う。
塾長:学生時代に身に付けにくい課題の一つは、「様々な症度の複数患者を受け持って、優先順位をつけること」なのかもしれませんね。皆さんはそれをどのように身に付けましたか?
Aさん:とにかく実践訓練ですね笑。ひたすら部屋持ちをして、なんとなくわかってきたかなって。
Bさん:そうですね、前に優先順位のことを先輩に聞いても、答えはないって言われました。
塾長:確かに、実際の患者さんやスタッフ配置の中で学ぶことは成長に一番効きますね。しかし反対に、できないながらもやらなければならない状況って、つらかったでしょう?
Cさん:私は今まさにそこで悩んでいます。優先順位を付けて回っても、予想外のことが起こって時間を食うこともあるし、自分の力不足で思っていた以上に処置に時間がかかることもあります。そうなると、「ああ、自分は看護師に向かない」って思っちゃう。
塾長:Cさんのような経験を僕もしてきました。お二人もありますか?
Aさん・Bさん:あります。
塾長:今振り返って思うと、僕の場合は3年目くらいまではその思いが続いていたような気がします。看護技術も自信がなかったし、優先順位の付け方も甘かったかな、と。3年目に劇的に変わったのかと言うとそうではなくて、自分の力量を知ったことと、心のゆとりを知ったことがきっかけですかね。それまではワークシートに書かれたケアを「絶対やる」と思い込んでいましたけど、「絶対やること」「時間があればやること」「やらなくてもよいこと」に分けるようになりました。例えば点滴は「絶対にやること」、清拭は「時間があればやること」、処置が立て込んでいるときの栄養指導は「やらなくてもよいこと」、みたいな感じですね。そうやって生まれたゆとりを記録に使ったり、もっと濃密なケアを提供したり。
Cさん:なるほど、時間がたてば解決するでしょうか?
塾長:看護技術は10年目になっても向上し続けます。1年目の今、たとえば採血が自立していなくても全く自立度は遅くないわけです。まだまだ発展途上なわけで、その中で予定通りケアに回れなくても、僕たち先輩から見れば「そりゃそう」なわけです。僕たちも同じような経験をしてきました。むしろ上手に回られたら立場がありません笑。
Aさん:師長さんが、3年は辞めるな、と言っていたのはそういうことなのかな。
塾長:もちろん、心を壊してまで働き続けろというのは酷だと思います。でも、1~2年目で、周りよりも自立が遅れているとか、上手く動けないとかいう悩みは、本当に「誤差」だと思って大丈夫です。2年目、3年目の先輩がうまく働けて輝いて見えるかもしれませんが、僕たちから見たら「誤差」です。来年、再来年には皆さんにも後輩ができて、今の2年目、3年目の様に必ずなれます。
Cさん:少し安心しました。
人間関係の話
塾長:皆さんの働いているナースステーションの雰囲気はいかがですか?
Cさん:厳しい先輩はいますが、皆さん優しいです。
塾長:「厳しさ」にもいろんな種類がありますね。Cさんの先輩はどのように厳しいですか?
Cさん:できないことを責められたり、そんな言い方をしなくても…って思うこともありますけど、根本には私を育てようとしてくれているって感じられるので。一方的に厳しいんじゃなくて、教育ママっていうか、そういう厳しさですね。
塾長:「目的を持った厳しさ」ですね。そしてちゃんとその「目的」をCさんに伝えてくれている。これはいい先輩例だと思います。
Bさん:うちは正直いい方じゃないと思います。
塾長:どうしてそう思うんですか?
Bさん:もちろん、優しい先輩はいます。困っていたら変わりにやってくれたりとか。でも、ただミスを責められたりとか、自分がやった処置の根拠をずっと質問されたりとか、そういう先輩が多いです。
塾長:優しい先輩は、そういうときに味方をしてくれますか?
Bさん:え…、いいえ。
塾長:ひょっとすると、本当に優しい先輩は後者なのかもしれません。「Bさんを育てる」という点においては、どちらが「優しい」でしょうか。
Bさん:それは確かにそうですけど…。
塾長:もちろん、後輩が答えたことにいちいち「なぜ?」「根拠は?」って聞いてくる先輩っていますよね。それは拷問に近いです。僕にも、何度も泣かされた先輩がいました。ある時、僕はどうしてもその先輩に仕返しがしたくなりました。だから聞いてみたんです。「なぜ清拭のお湯は50℃なんですか?」って。すると先輩は「触れる限界で一番暖かい温度なら、別に50℃じゃなくてもいいんだ」と言いました。「なぜ触れる限界で一番温かい温度にするんですか?」と聞くと、「人肌のお湯だと寒いからだ」と。そうやって「なぜ?」の拷問を逆にしてやったわけです。後輩の質問にことごとく答えて、最後にその先輩は言いました。「なぜ?って聞かれると心臓がぎゅーってなるでしょ。私の時代はそうやって先輩にしごかれたの。私はそれが悔しくて、いっぱい勉強した。そうやって成長するしか、方法を知らない。時々悪いなって思うこともあるけど、あなたの育て方を他に知らないんだよ。」と。僕はその時に初めて、この人は自分を育てようとしてくれているんだ、と感じました。大切なのは、新人看護師に「厳しく」するときは「目的を伝えること」だと思います。反対に新人は、先輩が育てようとしてくれているのか、ただその場限りのやさしさなのか、見極めることも大切なのかもしれません。
Bさん:確かに、その優しさには気づいていませんでした。
塾長:もちろん、むかつく先輩は職場に一人はいるものです。無理をして、厳しい先輩を受け入れる必要はないと思います。
Aさん:新人を無視したり、暴言を吐くだけの先輩もいますよね。
塾長:いますね、そういう人が一番厄介だと思います。新人看護師は先輩のストレスのはけ口になりやすい傾向がありますよね。ちなみに、大学病院などの大きな病院ですが、むかつく先輩看護師Zさんがいたとして、この人と一緒に働かなければならない年数は長くて3年と言われているのを知っていますか?
Aさん:初めて聞きました。
塾長:結婚・出産・配偶者の転勤などのライフイベントや、ローテーションなどによって、一緒に働く看護師はぐるぐる変わります。むかつく看護師がいても、「そのうちいなくなる」ということを知っていると気持ちも違いませんか?
Aさん:そうですね、そういうのもあるのかな、「三年続けなさい」って。
塾長:むかつくことを言われて、「気にしない」ということはすごく難しいことだと思います。それができたら苦労しない。その分、Aさんに後輩ができたら、うんと優しくしてあげてください。そうやってAさん派閥を作ってしまえば、職場の雰囲気も良くなるし、そのうちむかつく先輩はいなくなっていると思います。
Aさん:そうですね、そうしてみます。
キャリアアップの話
塾長:皆さんは、将来どのような看護師になりたいですか?
Bさん:私は、将来認定か専門を取りたいです。急性期の勉強をもっとしたいし、役に立ちたいと思っています。
塾長:素敵な目標だと思います。今、具体的に勉強していることはありますか?
Bさん:インターネットで調べるくらいしかできていません。
塾長:やりたいことを見つけて、少しずつでも歩みを止めないことは大切です。少しずつ仕事に慣れて、余裕ができたときに動ける準備ができたらいいですね。
Cさん:私は、結婚して仕事を辞めたいなって思ってます。
塾長:それも素敵な目標だと思います。看護師をするために生きる必要は全くありません。生きる手段の一つに看護師があるだけです。家庭に入って誰かを支えることは、看護師以上に大変なことだと思います。
Aさん:私は、明確な目標はありません。
塾長:Aさんは看護師を続けたいと思いますか?
Aさん:今のところは。
塾長:看護師を続ける、ということ自体、素敵な目標だと思います。キャリアアップとは、何か資格を得ることではありません。知識と技術を得ることです。看護師を続けていけば、どんどんAさんは成長していきます。それ自体、キャリアアップです。そのうち、何かやりたいことが見つかったら、そちらに舵を切ることもまた正解だと思います。
Aさん:やりたいことがなかったから、少しほっとしました。
コメント